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2005.07.10

【報告】第5回 りぶ・らぶ・あにまるず国際シンポジウム 2005「犬と拓く子ども達のコミュニケーション」

●実施日 2005年7月10日(日)13:00~16:30
●実施場所 神戸ポートピアホテル 本館B1「和楽の間」
URL:http://www.portopia.co.jp/
(〒650-0046神戸市中央区港島中町6丁目10番地1)
●主催 NPO法人 Knots
●展示協力 大震災動物救護メモリアル協議会
(構成団体:兵庫県、神戸市、(社)兵庫県獣医師会、(社)神戸市獣医師会、
(社)日本動物福祉協会 阪神支部)
●特別協賛
●協賛 アサヒビール株式会社
●助成 阪神・淡路大震災10周年記念事業推進会議/
「震災10年神戸からの発信」推進委員会/
(財)中内力コンベンション振興財団
●後援  環境省/兵庫県/神戸市/兵庫県教育委員会/神戸市教育委員会/
(社)日本獣医師会/(社)兵庫県獣医師会/(社)神戸市獣医師会/
(財)日本動物愛護協会/(社)日本動物保護管理協会/
(社)日本動物福祉協会/(社)日本愛玩動物協会/
(社)日本動物病院福祉協会/
駐大阪・神戸アメリカ合衆国総領事館関西アメリカン・センター
●座  長 山崎恵子氏 (ペット研究会「互」主宰)
●スピーカー  「事例報告」
『R.E.A.D.(Reading Education Assistance Dogs)プログラムについて』
キャシー・クロッツ
(米国/インターマウンテン・セラピーアニマルズ 常務取締役)
『療育犬を介しての発達障害児の指導について』
横室 純一
(発達障害児療育企画BAT 主宰、 日本知的障害児者療育犬研究会 代表 (別称:日本療育犬研究会)●各事例報告に基づく発達心理学的解説及び動物の役割について
中尾 繁樹
(神戸市教育委員会指導部特別支援教育課
こうべ学びの支援センター指導主事)「パネルディスカッション」
パネリスト
キャシー・クロッツ
横室 純一
中尾 繁樹

阪神・淡路大震災10周年記念事業ということもあり神戸市長よりメッセージが届きました。

 

神戸市長 矢田立郎氏より贈られた祝電

今回のシンポジウムは、読書教育支援犬(Reading Education Assistance Dogs)というセラピー犬をリードプログラム(R.E.A.D.Program)として開拓し、子ども達が犬への読み聞かせをすることで「読む」能力を改善させていくというユニークな手法を、米国で実践しておられる「インターマウンテン セラピーアニマルズ」常務取締役キャシー・クロッツ氏をお迎えして事例報告して頂きました。キャシー・クロッツ氏は講演の中で、子ども達にはプレッシャーを感じる事なくリラックスして学習に取り組める環境を整えることが必要で、リード犬は子ども達が読み聞かせをする相手として理想的なパートナーであること、その理由として子供たちにとって犬は、読みを間違えても批判しない・からかうこともない・評価しないで忍耐強くしっかり聞いてくれるという安心と自信を持って、本を読むことができるからですと話されていました。
プログラムを受けた子ども達の読み能力の向上や、読み能力以外のプラス効果は、リード犬、リードスタッフ、教育関係者や、医療チームなど多くのサポート体制がしっかりしているからこそ生まれてきた良い結果であるようにクロッツ氏の話しを聞いていて感じられました。その他にもリード犬が少年収容施設や病院でも活躍されている様子も紹介して頂きました。日本ではまだあまり馴染みのないリード犬の話に来場にこられた方々は熱心に耳を傾けていました。  次に、発達障害児療育企画BAT主宰 日本知的障害児者療育犬研究会代表 横室 純一氏に、発達障害児(者)に療育犬が与える影響について講演していただきました。発達障害児(者)は、どうしても行動を抑制されることが多く、支持待ち行動や無関心という状態になることが多い中、療育犬が果たす役割として、人では教えることの出来ない自発行動を誘発することができ、また障害者の心にも影響を与えていくことを話されました。横室氏は、発達障害児(者)の心に働きかける犬が療育犬であり、障害児と療育犬が意思や行動を自由に表現できる環境を与えることで、効果が現れることを事例を踏まえながら説明されました。また現在の日本の盲導犬や介助犬に対する独自のご意見も述べられ、これからの日本の補助犬・セラピー犬のあり方を考えさせられる話をして頂きました。横室氏の実際の現場で経験されてきた話にはとても迫力が感じられました。 3人目のパネラーには神戸市教育委員会の中尾繁樹氏をお招きし、子供の心の発達と動物の役割というテーマで講演して頂きました。子供のこころの発達を考えるとき触感覚は非常に大切であり、親子関係や対人関係、コミュニケーション力にも影響を与えていくことや、さらに動物が加わることで、情緒安定や緊張をほぐし反応を引き出し、子ども達、特に情緒面で不安定な子どもに「無条件に受け入れられる」という安心感をもたらすことができることを説明されました。親が子どもに対して心がけたい接し方、さけたい接し方など話され、「今日クロッツ氏の話しを聞いていてセラピー犬のの条件は、教育者に必要な条件と同じであると感じました」と中尾氏が話されると、会場の笑いを誘う一幕もありました。また現在の子供の受ける情報量は、一昔とは比べものにならないくらい膨大で、その情報量の多さに体が追いつかないという脳と体の発達のアンバランスさが、現代の子ども達の抱える大きな問題になっているという話には考えさせられました。

 今回で5回目の国際シンポジウムの座長を努めて頂いたペット研究家の山崎恵子氏には、時間が延長している中、司会進行を滞りなく進めて頂きました。パネルディスカッションの質疑応答では、来場者からの質問に、3人のパネラーが熱心に耳を傾け、それぞれの意見を率直に述べられている様子が伺えました。今回も会場は来場者で埋め尽くされ、遠方からも多くの方々が足を運んで頂き、この国際シンポジウムへの皆さんの関心度の高さが感じられました。時間も大幅に延長してしまいましたが、来場された方々は、皆さん最後まで熱心に聴講されていました。今回は、子ども達の心の発達において大切な事は何か考えさせられるシンポジウムとなりました、またその中で、動物達と子ども達との交流の素晴らしさも改めて感じましたが、子どもと動物との関わらせ方にも慎重に取り組むべき重要な点であると思われました。


今回の国際シンポジウムの最後には、阪神・淡路大震災から10年の節目を迎え、本シンポジウムも阪神・淡路大震災10周年記念として行われたため「—1556頭の救援— 阪神・淡路大震災動物救援活動を振り返る」と題して、スライド上映を行いました。震災時、人も動物も多大な困難に直面しました。しかしそこから人々は協力し助け合い困難を乗り越えてきました。震災に遭った動物のために働く、多くの方々の様子もスライドで映し出されました。場内は一段と静まり会場の来場者からも、当時を思い出されたのでしょう、すすり泣く声があちらこちらから聞こえました。そしてスライドの上映後、一早く震災時に動物救援の中心となって活動された、旗谷 昌彦先生と(当時:社団法人神戸市獣医師会会長)と松田 早苗氏(当時:社団法人日

本動物福祉協会阪神支部副支部長)のお二人にKnotsより、「りぶ・らぶ・あにまるず賞特別賞」を贈呈致しました。実は旗谷先生は松田氏のペットのホームドクターであり、お二人の深い信頼関係が救援事業の大きな力となったことも紹介され、震災10年の神戸からの情報発信として人々の心をつなぐ、深い信頼と強い気持ちが世の中を変えていくというメッセージをお伝えしました。今回の賞はお二人には事前にお知らせしておりませんでしたので、お二人はとても驚いた様子でいらっしゃいました。 旗谷先生は、これからの若い世代がこのようなシンポジウムを通じて学び、活躍していくことを期待していますと述べられ、松田氏は、動物行政には多くの課題があり、それを変えていくのは、皆さん一人一人の声ですとこれからの課題を与えて下さいました。
あの救援事業がなかったらKnotsも設立されることはなかったと思います。この気持ちを大切に今後も活動をしていきたいと決意を新たにさせていただきました。
受付横には大震災動物救護メモリアル協議会のご協力により、阪神・淡路大震災当時の動物救援活動の様子が展示されました。来場者の方々は熱心にご覧になっておられました。


パネル展示
「~1556頭の救援~阪神・淡路大震災動物救援活動を振返る」